2009年11月9日月曜日

 回復期リハビリについて 

最近リハビリテーションという言葉をよく耳にします。 rehabilitationという言葉は、re-という「再び」を意味する接頭語とラテン語のhabilitarre「能力」という言葉がくっついてできたものです。この言葉が医学的に使われるようになったのは、第一次世界大戦の頃の米国であり、戦争により多くの戦傷者が生まれ、それらに対し身体機能の回復や社会・職業への復帰のために理学療法や作業療法、職業訓練が行われるようになりリハビリテーションという言葉が使われるようになりました。
 リハビリにも「急性期リハビリ」「回復期リハビリ」「維持期リハビリ 」と大きく分類されます。そのなかで、今回のテ
ーマの「回復期リハビリ」についてお話します。「回復期リハビリ」とは、急性期に引き続いて機能障害の回復をはかるとともに、基本動作能力・歩行能力・家事動作・趣味活動・仕事・在宅復帰についての可能性・目標をみきわめ、進めていくリハビリのことです。
 対象となる方とは①脳卒中・脊髄損傷・頭部外傷・多発性硬化症などの発症後または手術後2ヶ月以内
            ②大腿骨・骨盤などの骨折後または手術後2ヶ月以内
            ③肺炎など治療時の安静により廃用性症候群を有しており手術後または発症後2ヶ月以内
            ④脊椎・骨盤・下肢の神経・筋または靱帯損傷後1カ月以内
   以外の方は原則回復期リハビリ病棟には入院できません。発症後・手術後からの日数制限がある事がポイ     
   ントです。回復の可能性の高い時期に十分なリハビリを行うように、という厚生労働省の考えです。
 
 京都市では現在10病院で回復期病棟が、開設されています。回復期病棟を開設するには、スタッフ数や廊下・部屋の広さなどの施設基準、過去の実績などが必要となります。リハビリの1日の単位数も増え、リハビリを集中的に受けることができます。
 当院での回復期リハビリ病棟をお話します。
当院では昨年12月に新築移転をしました。回復期設立を目的に設計したために、ゆったりとした病棟環境を備えることができました。病棟=生活の場とし、日常的にベッドサイドや廊下・食堂・浴室・トイレなど生活動作のリハビリを行っています。ご家族もいつでもリハビリを見学していただけるようになっており、実際に在宅に戻られた際の生活が想像しやすいと思われます。各専門のスタッフがチームを組み、患者様やご家族とともに目標(家庭復帰・職業復帰)に向かって取り組んでいます。また、患者様一人一人に入院時や毎月のカンファレンス、退院前カンファレンス、必要に応じて家屋評価も行っております。




リハビリテーションセンター
 リハビリテーションセンターではPT8人、OT6人、ST2人が勤務しております。比較的多いスタッフ数で患者様のリハビリを可能な限り手厚く行っております。病棟での訓練に加え、広く明るいリハビリテーションセンターでの訓練も積極的に行っています。最新機器での歩行訓練や、患者様がご自宅に帰られるために必要な生活動作訓練も行える環境になっています。


理学療法士 M.T

笑いと癒し

笑いは本来私たちが備えているのもです
 「笑う門には福来る」
 という言葉がありますが、笑いは生活に
おいて幸せをもたらすためにとても大切な
 
でもストレスの多い現代、一日笑うことがなかった」ということはないでしょうか
実際悩み等かかえてる場合はなかなか心の底から笑えないことも多いと思います。

「笑う」という行為には
いろいろな効果があります
 
笑いと言ってもクスクス笑いからガハハと大笑いまでその種類はさまざまですが
心の底からの笑いでなくても「笑う」という行為は健康効果があるということです。

 笑いにより人の免疫が向上したという結果もでているそうです
 
笑いには心のわだかまりや悩みなどをすっきりとさせて、心にゆとりを持つ力があります。
 
笑顔でいることは泣き顔怒り顔でいるよりもずっと気分がよく、また相手にも好印象をもたてるはずです。
 
笑っている時には交感神経と副交感神経がバランスよく働いていて自律神経の状態も安定しているので、笑いは心と身体の緊張をときます。
 笑いは、人が心も身体も元気に生きる為に不可欠なものなのです。
 
「こんな時に笑うなんてできない」
 そんな時にこそ笑ってみませんか 


事務部  T.T

理事長推薦ジャズ名盤 第4回

『ドミノ・セオリー』 ウェザー・リポート

 フュージョン全盛時代の70年代から80年代にかけて、人気実力No.1のジャズ・フュージョン・グループが、ウェザー・リポートです。オーストリア出身のキーボード奏者ジョー・ザヴィヌルとサックスのウェイン・ショーターを中心とするバンドですが、年を経るごとにザヴィヌルがイニシアティブをとってゆくことになります。同時代、チック・コリアやハービー・ハンコックといった多くのジャズ・ピアノの巨匠たちもフュージョンやロックへアプローチし、シンセサイザーを積極的に用いていきますが、彼らのフレーズがピアノで奏でてもかっこよく美しいメロディーが多いのに対し、ザヴィヌルの摩訶不思議なフレーズはシンセサイザーでなければ意味を成しません。最もシンセサイザーを研究し、使いこなしたジャズ・プレイヤーの一人であったと考えます。
 一般にウェザー・リポートの全盛期は『ヘビー・ウェザー』や『8:30』を発表した、天才ベーシスト、ジャコ・パストリアス在籍時代と言われています。しかし、私はあえてパストリアス脱退後、84年に発表された『ドミノ・セオリー』を推薦いたします。
 理由はザヴィヌルのプレイもさることながら、オマー・ハキムの凄まじいまでのドラミングを聴いていただきたいからです。オマー・ハキムの魅力は超絶技巧だけでなく、その独特のグルーヴ感にあります。「グルーヴ」という言葉の正確な定義はありませんが、リズムの「ノリ」とか「うねり」と表現すれば解りやすいでしょうか?しかもそのグルーヴ感を曲ごとに自由自在に変化適応させていく柔軟性を持っているのです。彼の活躍の場はジャズに留まらず、デヴィッド・ボウイ、スティング等のロックやマドンナ、セリーヌ・ディオン等のポップス、さらにはSMAPといった歌謡曲にまで及んでいます。しかも彼はそれぞれのジャンルで超一流のプレイを披露しています。私は、オマー・ハキムが現時点において世界一、いや宇宙一のドラマーであると考えています。
 どうぞ、ザヴィヌルのシュールなシンセサイザーと、オマー・ハキムの宇宙一のドラムを堪能してください。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純

2009年7月1日水曜日

音楽と癒しについて

自分でもすぐに終了すると思っていた、ロック名盤・ジャズ名盤シリーズの連載ですが、おかげさまで何人かの方々から楽しみにしているとのお言葉をいただいております。自分の好きなことについて好き勝手に書いているだけなのですが、お褒めや励ましの言葉をいただき、大変恐縮するとともに、光栄に存じています。この場をお借りして御礼申し上げます。今しばらく連載を続けようと思っておりますので、どうぞお付き合いください。
 さて、今回は、そんな音楽と医療の関係についてお話ししてみたいと思います。
 ストレス社会と言われるようになってから久しく、さらに昨年からは、100年に一度といわれる大不況の嵐が吹き荒れ、「癒し」を求める人々がどんどん増えています。温泉やマッサージやアロマテラピーといった「癒し」を看板に掲げるサービスも増加の一途です。音楽にもこの傾向は顕著で、「ヒーリング・ミュージック」と呼ばれるジャンルが確立し、CDショップに行くと、「ヒーリング・ミュージック」のコーナーを設けているところもあります。 ヒーリングとはいうまでもなく英語のhealingで、「癒し」という意味からさらにはもっと積極的な「治療」という意味も持っています。音楽は単なる「癒し」だけでなく、病気の「治療」にも使われるようになってきているのです。音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる行為 を「音楽療法」といいます。
 では、いつごろから音楽が「癒し」「治療」に使われるようになってきたのでしょうか?その歴史は古く、民間療法としては古代エジプトや古代ギリシアの時代から病気の治療に使われていたようです。ただ、現在病院等で治療として行われている近代的な意味での「音楽療法」は比較的歴史が浅く、20世紀はじめにアメリカで発祥しました。日本ではさらに遅れて戦後になってから行われるようになりました。
 現在、「音楽療法」は裾野が広がり、多くの医療や介護の現場において取り入れられるようになってきています。しかし、病気の治療法として確固たる位置を占めているわけではありません。その原因として、治療の効果についてデータが不足しており、つまり、いわゆるエビデンスが少ないために、保険診療として認められていないこと、「音楽療法」を実際に行う「音楽療法士」に国家資格がないことなどが挙げられると思います。
 そんな状況を打破するため、1995年に「全日本音楽療法連盟」が発足し、その流れを汲み2001年にスタートした「日本音楽療法学会」が、「音楽療法」の研究・教育体制を確立すべく活動しています。近い将来、「音楽療法士」が国家資格となり、「音楽療法」が保険診療として認められることが望まれます。
 現在、脳神経リハビリ北大路病院では、レクリエーションとして3ヶ月に1回院内ミニコンサートを行っています。また、言語療法としての歌唱訓練を行っています。しかし、本格的な「音楽療法」はまだ行っておりません。脳神経リハビリ北大路病院は身体だけでなく、心のリハビリテーションが重要であると考えております。今後、少しずつ範囲を広げ「音楽療法」を取り入れて行きたいと考えております。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純

回復期リハビリ病棟が本格稼動へ!

北大路病院では、六月から行政の認可をいただき、今回の病院移転の最終目的でもあった「回復期リハビリ病棟」が開設されました。
   
では、「回復期リハビリ病棟」とはどんな病棟なのでしょうか。
医療のしくみの中では、急性期の治療が終了した次の段階、特に機能回復のためのリハビリを集中的に実施する役割を担う病棟と位置づけられていて、
① 国が定める基準による専門のスタッフが定数配置されている。
② 発症・手術から二ヶ月以内の患者様が対象。
③ 疾患別に入院期間が定められている。(脳卒中なら原則一五〇日までの入院等)
などの制度としての取り決めがあります。なるべく短い期間で、在宅への復帰を可能にしていくことを目的として考えられている病棟といえます。
一方当院では、その役割と目指すところは次のような点であると考えています。
急性期の病院に脳卒中や骨折などで入院し、また手術をした後で、「今までと同様に家に帰って家族と一緒に暮らしたい」、そんな思いで頑張ってリハビリを行う患者様に対して、その思いに向き合い、それに応えてあげたいと願う家族の方を支援して、その思いを実現していくために、
① 担当スタッフが共同してその専門性を発揮し、
② 問題点を根気よく克服する努力と工夫をし、
③ 患者様やご家族様の要望を聞き、話し合いながら、
④ その患者様に合った、可能な限り一番良い形での在宅復帰の形を作り出すこと。
このように回復期リハビリ病棟とは、「在宅」という向こう岸へ渡るための大切な橋の役目をするものといえます。

当院は新病院になってから、急性期の医療を行う病院、脳卒中後の患者様を中心に、家庭復帰のためのリハビリを提供する病院をめざしてきました。その意味でいよいよ「脳神経リハビリ」病院として、名実ともに質の高いリハビリを地域に提供していく体制が整ったことになります。さらに、おそらく全国でも唯一と思いますが、診療内科の専門医がいる「リハビリ病院」として、心身両面からのリハビリを実施していくことも、今後の取り組みとして進めていきたいと考えています。

理事長推薦 ジャズ名盤 第3回

『想い出のサン・ロレンツォ』 パット・メセニー・グループ

 パット・メセニーは、ロックに近いジャズからアヴァン・ギャルドまで、実に幅広い活動を行い、人気・実力No.1のジャズ・ギタリストです。ジャコ・パストリアスやオーネット・コールマンなど多くのミュージシャンと競演し、さまざまなジャンルに挑戦していますが、やはり、彼の魅力が最も引き立つのは、盟友であるキーボーディスト、ラリル・メイズとの競演しているパット・メセニー・グループでのプレイだと思います。その原点といえるのが、78年に発表されたパット・メセニー・グループとしてのファースト・アルバム『想い出のサン・ロレンツォ』 です。
 こんなに爽やかなフュージョン・サウンドは他ではなかなか聞くことが出来ません。アルバムタイトルである1曲目の冒頭から、メセニーのギターとメイズのピアノによる透き通るような美しいコードが響きわたり、そこへマーク・イーガンの哀愁漂うフレットレス・ベースの旋律が絡まり、心を洗濯機で洗われたような気持ちになります。さらに曲が進むに従い、ステンドグラスから降りてくるオレンジ色の光のシャワーで包み込まれるような清涼感に満たされていきます。(フィレンツェ にあるサン・ロレンツォ教会へはもちろん行ったことがありません。サン・ロレンツォ教会にステンドグラスがあるのか、それがオレンジ色なのか全く知りません。単なる私の想像です。あしからず。)
 そうそう簡単にはイタリアへ行く事は出来ませんが、『想い出のサン・ロレンツォ』 はレンタルでも簡単に手に入ります。是非お聴きいただき、心の旅を堪能していただければと思います。

医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純

ストレスの話し

 ストレス反応は心、体に様々な形で現れます。ストレスが関与する事が考えられるストレス疾患には現在31種類もの疾患名が挙げられています。一般的には過労、重圧、人間関係、不安などに対する否定的反応による精神的疲労というような意味で使われますが、正確にいうと、「何らかの刺激が体に加えられた結果、体が示したゆがみや変調」で、この刺激をストレッサーといいます。このストレッサーに対する心身の緊張がストレスなのです。なので、この心身の緊張をリラックスする事や癒す事、取り除く事で弛緩するのがストレス解消になります。
 しかし、様々な刺激が何もない(ストレスが何もない)状態でいると、体の体温調節機能が低下し、暗示にかかりやすくなり、幻覚、妄想まで起こってしまったという実験例もあったそうです。心と体のバランスを保つには、適度なストレスも必要であり、ストレスが全くない人はいないのです。自分が心地良いと感じられるストレス解消法を日常生活の中で見つけたいものです。

【ストレスが原因で起こりやすい病気】
神経性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、自律神経失調症、虚血性心臓病、心臓神経症、円形脱毛症、そううつ病、本能性高血圧、過呼吸症候群、頭痛、メニエル症候群、神経性嘔吐、膀胱神経症、不眠症
など


看護師 M.T

リハビリだより

第9回  『リハビリの意味』


今回は、「リハビリ」とはどのような意味かを紹介したいと思います。

リハビリのイメージは、マッサージのようなものでリハビリをすると気持ちよくなったり、楽になるなどをよく聞く事があります。

それは、決して間違いではないのですが一般的に使われている「リハビリ」と言うカタカナの元々の意味を紹介します。

まず、リハビリと言う言葉が使われたのは、中世ヨーロッパで戒律を犯し破門された者が、破門を解かれ名誉や地位を回復した場合に用いられていました。

 その後は無実の罪をきせられた者が、無実が明らかになり名誉を回復した場合や、20世紀になると犯罪者が更正し社会復帰した場合などに使われていた歴史があります。

医学的に使われ始めたのは、第1次世界大戦の頃の米国であり、戦傷者の方々に対する、身体・心理機能の回復や社会・職業への復帰のために、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などが行なわれるようになりリハビリと言う言葉が使われはじめました。

リハビリはリ・ハビリテーション(Re-habilitation)を短くしたもので、「リ(Re)」とは「再び・元へ・新たに」などという意味があり、「ハビリテーション(habilitation)」の意味は大きく二つあり一つ目はラテン語の「能力」という意味の「ハビリター(habilitare)」。

もう一つは、人類の祖先である猿人と原人の中間に位置する、ホモ・ハビリス(Homo Habilis)です。

 ホモ・ハビリスは「器用なヒト」を意味し、道具を作りそれを使って生活をしていた歴史があり、ハビリスは「人間にふさわしい」と言う意味でも使われ、それは適応、有能、役立つ、生きるなどの意味を含んでいます。

つまり、リハビリとは何らかの問題のために元々持っていた能力に不具合が生じた際にその不具合を改善したり、不具合をもちながらも生活できるように「人間らしく生きる権利の回復」「自分らしく生きる」ことを目指すものであり、再び能力を回復するという意味が語源となっています。

リハビリの行い方や内容は患者様の症状などによりそれぞれ違います。

まず私達は、患者様が何を望んでいるのか、リハビリを行うことでどうなりたいのかを聞くことを大切にし、生活を送るにあたりどんな問題が生じてくるかを予測し、患者様が自分らしく生活できる手助けを行えるようなリハビリテーションを提供したいと日々思っています。



医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純

2009年3月31日火曜日

ひどい頭痛「偏頭痛」

 片頭痛という言葉を聞いたことがある方は、たくさんおられると思います。片頭痛は心臓の拍動にあわせてズキンズキンと痛みます。激しい痛みとともに、嘔気・嘔吐、下痢などの症状を引き起こしたりして、仕事や学業、日常生活に支障を来たすやっかいな頭痛です。私自身も片頭痛を患っていますが、2000年に新しい薬(トリプタン製剤)が開発されて、治療しやすくなってきました。

1、 どんな病気か?
 片頭痛に悩まされている人は非常に多く、日本人の15才以上の8%以上、800万人~900万人が片頭痛に悩んでいると言われています。約80%が女性です。30才代の女性では5人に1人が片頭痛と言われています。
 片頭痛が起こる頻度は1ヶ月に1~2回のことが多いですが、多い人では週に2回以上起こる人もいます。
 一度片頭痛発作が起こると、短くて数時間、長いと3日間くらい、ズキンズキンと心臓の拍動に合わせるような頭痛が続きます。頭の片側のことが多いですが、両側に起こる場合もあります。
 痛みは動けない程強いこともあり、頭の位置を変えるだけでも痛みが悪化します。光や音に敏感になり、騒々しいところや明るいところにいられなくなります。嘔気・嘔吐や下痢を伴うこともあります。

2、 なぜ起こる?
 片頭痛のメカニズムはまだよくわかっていませんが、最近になって頭や顔面の知覚をつかさどる三叉神経が関係しているとわかってきました。
 脳の血管は常に収縮・拡張して、脳の血流が一定になるように調整しています。この血管の収縮・拡張に関与しているのが血液中の血小板から放出される「セロトニン」という神経伝達物質です。セロトニンはストレスを感じたときや、女性では月経周期に伴い女性ホルモンの量が変化したときなどに血管内に大量放出されることがあります。
 セロトニンの大量放出が続くと脳の血管は収縮するのですが、セロトニンが出尽くしてしまうと、脳の血管が急激に拡張します。急激な血管拡張は血管壁や血管周囲の三叉神経を刺激して炎症を引き起こし、痛みすなわち片頭痛が起こります。

3、 片頭痛の前ぶれ
 片頭痛が起こる直前に、目の前がチカチカする、ギザギザしたものが見える、あるいは視野の一部が欠けるなどの症状が出ることがあります。これらは片頭痛の前ぶれ症状で、セロトニンの大量放出で脳の血管が収縮しているときに起こります。

4、 診断
 診断は問診が中心になります。診察室では次の点を詳しく伝えましょう。
①痛みの特徴:痛み方、痛みの起こ る場所、痛みが続く時間など
②発症年齢
③頭痛以外の症状:光や音、におい に敏感になったり、下痢を伴った りします
④きっかけの有無:アルコール、チョ コレート、入浴など

5、治療
 片頭痛の治療で使われるのは主に次の2種類です。

①消炎鎮痛剤
 市販のセデス、バファリン、ナロンエースなども含めて、以前から使われてきた薬です。
 血管壁やその周囲の炎症を鎮めて痛みをおさえます。おもに症状が軽い人や発作の頻度が少ない人に使います。但し、頭痛が起こる直前の前兆が現れたときから、頭痛が起こってすぐに服用しないと効果はあまりありません。

②トリプタン製剤
 2000年に承認された薬で、現在は医師の処方箋が必要です。
 主に拡張してしまった脳の血管を収縮させて正常な太さに戻すとともに、三叉神経から痛みの原因物質が放出されるのをおさえます。おもに症状が重く仕事や日常生活に支障がある人に使います。
 この薬は消炎鎮痛剤に比べて服用のタイミングが遅れて、頭痛が強くなってからでも効くという長所があります。
 病院では、主にこのトリプタン製剤を使って治療しています。私もこの薬のおかげで休まずに仕事をできています。

6、薬の副作用
 消炎鎮痛剤では嘔気や胃腸障害が出ることがあります。また長期にわたって大量に使い続けると、逆に薬によって「薬剤誘発性頭痛」がおこる場合もあります。薬はなるべく飲みたくないといって服用のタイミングが遅れると余計に効果が薄れるので、大量に服用してしまうという悪循環に陥りがちです。
 トリプタン製剤は痛みが強くなってからでも効果があるので薬を飲みすぎることはあまりありませんが、血管を収縮させるので、治療されていない高血圧の方などには使えません。


7、注意しなければいけない頭痛
 ごく軽いくも膜下出血の頭痛は、片頭痛と区別がつきにくいことがあります。片頭痛の方でいつもと違う頭痛が起きたときは要注意です。また片頭痛は30才位までに始まることが多いので、30才を過ぎて初めて強い頭痛が起きた方も一度CT・MRIなどで検査されることをお勧めします。


8、日常生活
 片頭痛はストレスから解放されてほっとしたときによく起こります。片頭痛を予防するには、普段からストレスをためないようにすることが重要です。
 但し、現代人は私を含めてストレスなしで生活することは不可能です。悩んでいる方は「頭痛くらいで病院に行くなんて」と思わず、ぜひ「脳神経リハビリ北大路病院の頭痛外来」を予約してください。片頭痛を持っている医師の方が話はよくわかると思っています。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
院長 岡田達也(偏頭痛患者)

真に豊かな社会のための技術とは

 技術の継承には、ただ単に量的な後継者の確保だけでなく、最先端且つ高レベルの技術といった質的な課題がある。伝統産業においては、無形文化財のような極めて高度な技術や、過去に失われてしまった技術を復活させる試みもある。これは技術者個々の資質に大きく依存するもので、個別に対策を考える必要がある。個人の誇りや意欲を拠り所として、多くの若者に高度な技術を持った職人になろうという動機付けをするには、世界に誇る日本の技術レベルの価値をアピールすることが重要である。また、高度な技術を発揮する機会なくして、その技術は継承されないので、幅広い日常的な商品の普及と同時に、高級品市場への対応と営業を強めることが求められている。
 技術・技法は固有なものであっても、その価値・個性・限界は、他の技術・技法・素材などに出合ってこそ明確になるので、高度な技術を追求していく上で、他の業種・技術・技法・素材などの職人や生産者との間における研鑚・交流を積極的に進めていくことが必要である。その中で、何が私たちの社会を豊かにするのかという共通項を探り、個々人の利益を越えた共通の利益を共有できる仲間を増やして行かなくてはならない。
 人員確保の問題、教育の問題、技術継承の問題、経済的自立の問題、そのすべてにおいて、正に、医療・福祉分野が直面している共通課題だと言えよう。


訪問看護師 T・T

理事長推薦ジャズ名盤 第2回

第2回『TUTU』 /マイルス・デイヴィス

 第2回目にして早くも帝王マイルス・デイヴィスの作品を紹介します。マイルスは言うまでもなく、ジャズ界最大の巨星であり、その作品は音楽的にも歴史的にも重要なものばかりです。おそらく、彼の代表作を1枚挙げるとなると、人によってそれぞれ全く異なる作品を選ぶのではないでしょうか?私は、晩年の86年に発表されたこの作品を推薦いたします。
 この作品を推薦する理由としては、リアルタイムに聴いていて愛着があるというのももちろんですが、大変聴きやすく、初めてマイルスを聴くにはもってこいの1枚と考えるからです。
 この作品では、プロデューサーにトミー・リピューマとマーカス・ミラーが起用されています。トミー・リピューマはYMOを全世界に紹介したことで、日本でもお馴染みのポップス界の名プロデューサーです。マーカス・ミラーは80年代以降人気実力ともにNo.1のベーシストで、ジャズにとどまらず、ロック、ポップス、R&Bなどあらゆるジャンルのおびただしい数のセッションに参加しています。プロデューサーとしても幅広く活躍しています。
 そんな2人がプロデュースしたこの作品は、当時の最先端サウンドで満ち溢れています。デジタル・シンセサイザーを多用し、シーケンサーを用いたいわゆる「打ち込み」の曲も多くあります。4ビートの曲はありません。今聴いても全く古さを感じさせません。
 特に、ほとんどの曲にベースのみならずマルチプレイヤーとして参加し、作曲編曲もこなしているマーカス・ミラーの存在感は圧倒的です。彼の透き通るような美しい音色のスラップ奏法(弦をネックに強く当てて大きな音を出す奏法)が随所で聞かれ、マニアにとって流涎ものです。この作品はマイルスとマーカス・ミラーの共作といっても過言ではではないでしょう。
 とにかく「かっこいい」という言葉がぴったりな1枚です。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純

2009年1月30日金曜日

心療内科開設

◎ どういう時に心療内科にかかればいいの?

 「何となく身体がだるい、胸がドキドキする、息苦しい、頭が痛い、身体がふわふわする、食欲がない、お腹が痛い、体重が減った、眠れない」などといった症状で病院を受診したけれど、検査をしてもどこも異常がありませんと云われた方はおられませんか?

 人間の身体の臓器と脳の間には自律神経という神経があって、この働きが乱れることによって身体の臓器や器官がうまく作動しない場合にこのような症状が出てくることがあります。一般的な検査でわかるのは器質的な異常のみで、こうした各臓器の機能的な異常は見逃されることが多いんです。また人間の身体は下垂体、甲状腺、副腎、卵巣など様々な臓器から出るホルモンによっていろいろな機能が調節されていて、こうしたホルモンのバランスに異常がある場合も同様の症状が出てくることが知られています。これも健診などの一般的な検査ではホルモンレベルまで測定しないため、異常が見つかりにくいことが知られています。

 今日のストレス社会の中で、さまざまな理由から不安になったり、イライラしたり、気持ちが沈んだりすることによって、脳の慢性的な疲労をきたす場合も自律神経の働きを介して同様の症状が出てくることが知られています。このような症状に対して、心療内科では心と身体の両面からアプローチしていきます。人間の身体を心と身体に分けて治療するのではなく、「心身一如」の考え方のもと、治療を進めていくことが心療内科の特徴といえます。

 このような症状や病気でお悩みの方、一度心療内科を受診してみてください。

◎ 心身症ってどんな病気?

 心身症って聞いたことがありますか?今日のストレス社会の中ではこの心身症が急激に増加してきていることが知られています。でもこの心身症、実は病気の名前ではないんです。どういうことかというと、身体の病気の中で、その病気の発症や経過に心理的なストレスや生活環境などの社会的要因が密接に関わっている病態のことを「心身症」と呼んでいるのです。身体の病気の中には実際に目に見えてその器官が形態的に障害されている場合と、形態的に異常がなくてもその器官の働きが損なわれている場合とがあるのですが、そのいずれにおいても心身症の病態を示すことが知られています。

 自律神経系の働きが乱れることによって器官の働きに異常をきたしている病気を「自律神経失調症」と呼んでいますが、この自律神経系の働きの乱れは心理的ストレスと密接に関わっていることが多く、自律神経失調症は心身症の代表格といえます。
その他、呼吸器系疾患としては気管支喘息・過換気症候群など、循環器系としては高血圧・狭心症・心筋梗塞など、消化器系としては胃潰瘍・過敏性腸症候群・上部消化管機能異常など、神経・筋肉系としては緊張型頭痛・片頭痛・めまい症、線維筋痛症など、内分泌系としては糖尿病・甲状腺機能亢進症など、さまざまな身体の病気が心身症としての病態を持っていることがわかってきました。最近注目されているメタボリック・シンドロームも心身症としての治療を要する病気の1つといえるでしょう。

 こうした心身症の治療には心と身体の両面からアプローチが不可欠と考えられています。心療内科は「心身症を治療する専門診療科」としての役割も担っているのです。


医療法人一仁会 
脳神経リハビリ北大路病院
副院長 椋田稔朗
(心療内科専門医、糖尿病・甲状腺専門医)

運動の話

 運動は、有酸素運動と無酸素運動に分けられます。
 有酸素運動は、ウォーキング・マラソンなど比較的長い時間かけてする運動のことです。有酸素運動には、心臓や肺の機能を活性化させたり、脂肪を燃焼させる効果があります。有酸素運動の基本は、ゆっくり・長く・繰り返すということです。会話ができる程度の運動で十分に効果があります。逆に無理して頑張って息が苦しくなる運動になると後述する無酸素運動になってしまい脂肪は燃えにくくなります。有酸素運動は、生活習慣病予防、ダイエットによく利用されます。有酸素運動で脂肪を燃焼させるには20分以上続けて運動すると特に効果的だと言われています。長時間続けられるペースで行う事が大切です。

 次に無酸素運動ですが、腕立て伏せ・スクワットなど基本的に筋力トレーニングの事です。無酸素運動では、筋肉が活性化されることで血液の流れ、酸素の供給などを向上させエネルギー消費を多くさせ1日の基礎代謝カロリーが増えます。筋肉は、寝ている時も脂肪を燃焼してくれるので、筋肉を活性化させると太りにくい体質になるという効果があります。
 有酸素運動と無酸素運動、それぞれに長所があり、2つの運動を組み合わせ行うとより運動の効果が表れます。

 私自身お腹が出てき始めてから長い月日が経ちました。お腹を引っ込め、アスリートのような割れた腹筋を目指そうと何度か決意しましたが、未だに割れる気配すらなく、逆にさらにお腹が出てこようとしています。今年こそは、いや来年中にこの腹筋を割ろうとお腹を見つめながら思っています。


理学療法士  T・T

理事長推薦ジャズ名盤 第1回

第1回『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 /V.S.O.P.クインテット

 第1回目のジャズ名盤としては別の作品を考えていたのですが、1月1日の朝刊にフレディ・ハバートの訃報が掲載されていたのを目にし、急遽変更いたしました。彼への追悼の意味を込めてこの作品をご紹介します。
 内容に触れる前に「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」についてご説明します。日本たばこ産業がメイン・スポンサーとなり、77年から92年にかけて行われた大規模な野外ジャズ・フェスティバルで、大阪では「万博公園お祭り広場」で毎年8月に開催されました。今となっては考えられないのですが、学生にも手が届くリーズナブルな料金(5,000円位だったと思います)で、マイルス・デイビスやチック・コリアやハービー・ハンコックといったスーパー・スターたちのライブを見ることが出来たのです。バブル景気のなせる業でした。私も80年代にはほぼ毎年通い続けたものでした。しかし、残念ながらバブルがはじけ、スポンサーが撤退し、フジ・ジャズ・フェスティバル等他の大規模な野外ジャズ・フェスティバル同様終了となってしまいました。2000年代に入り、各地で野外ロック・フェスティバルが盛り上がりを見せているので、何とか「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」も復活してほしいものです。
 さて、『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 は79年の第3回「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」田園コロシアムでのライブ録音です。『伝説』と仰々しい言葉がついていますが、これは決して誇張ではありません。この日東京は豪雨に見舞われのですが、V.S.O.P.クインテットが1曲目の「アイ・オブ・ザ・ハリケーン」を演奏している間だけ曲のタイトルどおり雨がやんだという嘘のような逸話が残っているのです。もちろん聞いていただければ解りますが、演奏自体も凄まじく、『伝説』と呼ぶに相応しいものです。
 メンバーはハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)、ウェイン・ショーター(サックス)、そして、トランペットのフレディ・ハバートです。つまり、60年代のマイルス黄金期のメンバーが再結集して、病気療養中であったマイルスの代わりにフレディ・ハバートが参加したユニットがV.S.O.P.クインテットということになります。
 2曲目以降は再び豪雨となり、演奏者も観客もずぶぬれになっていたとのことですが、逆にそれが観客との一体感を増していきます。ライナーノーツにもハンコックの言葉として紹介されていますが、「自然のインプロヴィゼーションが演奏者のインプロヴィゼーションを触発」していったようです。前回紹介した『浪漫の騎士』では計算され尽くした演奏技術の極限を聴くことが出来ますが、『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 では即興での演奏技術の極限を堪能することが出来ます。
 1997年にはトニー・ウィリアムスがこの世を去り、今回フレディ・ハバートも亡くなりました。しかし、彼らが残した『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 は永遠に語り継がれることでしょう。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純