2009年7月1日水曜日

音楽と癒しについて

自分でもすぐに終了すると思っていた、ロック名盤・ジャズ名盤シリーズの連載ですが、おかげさまで何人かの方々から楽しみにしているとのお言葉をいただいております。自分の好きなことについて好き勝手に書いているだけなのですが、お褒めや励ましの言葉をいただき、大変恐縮するとともに、光栄に存じています。この場をお借りして御礼申し上げます。今しばらく連載を続けようと思っておりますので、どうぞお付き合いください。
 さて、今回は、そんな音楽と医療の関係についてお話ししてみたいと思います。
 ストレス社会と言われるようになってから久しく、さらに昨年からは、100年に一度といわれる大不況の嵐が吹き荒れ、「癒し」を求める人々がどんどん増えています。温泉やマッサージやアロマテラピーといった「癒し」を看板に掲げるサービスも増加の一途です。音楽にもこの傾向は顕著で、「ヒーリング・ミュージック」と呼ばれるジャンルが確立し、CDショップに行くと、「ヒーリング・ミュージック」のコーナーを設けているところもあります。 ヒーリングとはいうまでもなく英語のhealingで、「癒し」という意味からさらにはもっと積極的な「治療」という意味も持っています。音楽は単なる「癒し」だけでなく、病気の「治療」にも使われるようになってきているのです。音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる行為 を「音楽療法」といいます。
 では、いつごろから音楽が「癒し」「治療」に使われるようになってきたのでしょうか?その歴史は古く、民間療法としては古代エジプトや古代ギリシアの時代から病気の治療に使われていたようです。ただ、現在病院等で治療として行われている近代的な意味での「音楽療法」は比較的歴史が浅く、20世紀はじめにアメリカで発祥しました。日本ではさらに遅れて戦後になってから行われるようになりました。
 現在、「音楽療法」は裾野が広がり、多くの医療や介護の現場において取り入れられるようになってきています。しかし、病気の治療法として確固たる位置を占めているわけではありません。その原因として、治療の効果についてデータが不足しており、つまり、いわゆるエビデンスが少ないために、保険診療として認められていないこと、「音楽療法」を実際に行う「音楽療法士」に国家資格がないことなどが挙げられると思います。
 そんな状況を打破するため、1995年に「全日本音楽療法連盟」が発足し、その流れを汲み2001年にスタートした「日本音楽療法学会」が、「音楽療法」の研究・教育体制を確立すべく活動しています。近い将来、「音楽療法士」が国家資格となり、「音楽療法」が保険診療として認められることが望まれます。
 現在、脳神経リハビリ北大路病院では、レクリエーションとして3ヶ月に1回院内ミニコンサートを行っています。また、言語療法としての歌唱訓練を行っています。しかし、本格的な「音楽療法」はまだ行っておりません。脳神経リハビリ北大路病院は身体だけでなく、心のリハビリテーションが重要であると考えております。今後、少しずつ範囲を広げ「音楽療法」を取り入れて行きたいと考えております。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純