2009年11月9日月曜日

理事長推薦ジャズ名盤 第4回

『ドミノ・セオリー』 ウェザー・リポート

 フュージョン全盛時代の70年代から80年代にかけて、人気実力No.1のジャズ・フュージョン・グループが、ウェザー・リポートです。オーストリア出身のキーボード奏者ジョー・ザヴィヌルとサックスのウェイン・ショーターを中心とするバンドですが、年を経るごとにザヴィヌルがイニシアティブをとってゆくことになります。同時代、チック・コリアやハービー・ハンコックといった多くのジャズ・ピアノの巨匠たちもフュージョンやロックへアプローチし、シンセサイザーを積極的に用いていきますが、彼らのフレーズがピアノで奏でてもかっこよく美しいメロディーが多いのに対し、ザヴィヌルの摩訶不思議なフレーズはシンセサイザーでなければ意味を成しません。最もシンセサイザーを研究し、使いこなしたジャズ・プレイヤーの一人であったと考えます。
 一般にウェザー・リポートの全盛期は『ヘビー・ウェザー』や『8:30』を発表した、天才ベーシスト、ジャコ・パストリアス在籍時代と言われています。しかし、私はあえてパストリアス脱退後、84年に発表された『ドミノ・セオリー』を推薦いたします。
 理由はザヴィヌルのプレイもさることながら、オマー・ハキムの凄まじいまでのドラミングを聴いていただきたいからです。オマー・ハキムの魅力は超絶技巧だけでなく、その独特のグルーヴ感にあります。「グルーヴ」という言葉の正確な定義はありませんが、リズムの「ノリ」とか「うねり」と表現すれば解りやすいでしょうか?しかもそのグルーヴ感を曲ごとに自由自在に変化適応させていく柔軟性を持っているのです。彼の活躍の場はジャズに留まらず、デヴィッド・ボウイ、スティング等のロックやマドンナ、セリーヌ・ディオン等のポップス、さらにはSMAPといった歌謡曲にまで及んでいます。しかも彼はそれぞれのジャンルで超一流のプレイを披露しています。私は、オマー・ハキムが現時点において世界一、いや宇宙一のドラマーであると考えています。
 どうぞ、ザヴィヌルのシュールなシンセサイザーと、オマー・ハキムの宇宙一のドラムを堪能してください。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純