2007年7月3日火曜日

高血圧について


 高血圧は、現在推定3000万人前後の人が罹患しているといわれ日本で最も多い病気のひとつと言えます。様々な診断基準がありますが、一般には腕で血圧を測定して、収縮期血圧(よく上の血圧と呼ばれる)が140mmHg/拡張期血圧(同じく下の血圧)が90mmHg以上となれば高血圧と診断されることが多いようです。朝の家庭血圧は起床時、排尿後、朝食前に1-2分安静の後、座って測る血圧を基本として考えます。

 よく「血圧の薬は飲みだしたら一生飲まなければならないので飲みたくない。」といわれる方がいらっしゃいますが、それは本末転倒な考え方です。そもそも高血圧は自覚症状がないことが多く、なぜ薬を内服したりして治療しなければならないのでしょうか?それは高血圧を長期にわたって未治療のまま放置すると、全身の血管が傷んだり動脈硬化をおこし、その結果、脳梗塞・脳出血やくも膜下出血、心筋梗塞をはじめとする心臓病、高血圧性腎障害、高血圧性網膜症など、重大な病気を発症してしまう危険性が正常血圧の人と比較して、(病気によっては何倍も)高くなってしまうことがわかっているからです。

 例えば、もし脳出血を起こせば、それによって命を落としたり、あるいはそうでなくても半身不随など重篤な後遺症を残すことがあります。また高血圧性網膜症で視力が低下したりすれば、日常生活においても不自由なこととなるでしょう。これらの病気は一度なってしまえば完全に元どおりの身体機能を回復することは難しく、その後の人生に大きな影響を与えることは容易に想像されると思います。このような恐ろしい病気を発症する可能性をできる限り下げ、健康で長生きできるようにすることが高血圧治療の真の目的なのです。

 さて高血圧の治療といえば皆さんは何を思い浮かべられるでしょうか。まず最初に考えるべきは日常生活習慣の修正です。血圧と食塩摂取量は密接な関係があります。日本人はもともと一日の塩分摂取量が平均13g程度と多く、そのため高血圧を発症する方が多いと言われています。かつて日本人の死因で最も多かったのは脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血等)で、これは血圧の高い人が多いにもかかわらず、その治療の必要性が現在より比較的認識されていなかったためではないでしょうか。日本高血圧学会の治療ガイドラインでは理想的な塩分摂取量は一日6-7gとされております。実際に家庭でこの通りの塩分量を守るのは難しいかもしれませんが、


 ①味付けを薄味にする

 ②麺類のスープは半分残す(麺類の塩分はびっくりするくらい多いのです)

 ③漬物など塩分の多いメニューや外食の回数をへらす

 ④野菜をしっかり取る(重篤な腎障害の方は注意が必要ですが、野菜に含まれるカリウムは塩分の吸収を減らす作用がある)


などをポイントとして、できる限り摂取塩分量を減らすように努めることが大事と考えます。

 また他にも血圧を上げる生活習慣としては、喫煙・肥満・過量のアルコール摂取・ストレスや過労などが挙げられます。タバコを吸えば毛細血管が収縮し血液が通りにくくなったり、体重が10kg増えると10kgの荷物をいつも担いで生活しているのと同じで、このように考えてみると血圧が上がる原因として納得できるでしょう。これらの血圧上昇の原因となる要素をひとつひとつ改善することで、ある程度平均血圧の低下が期待できると考えます。

 しかしながらこのように生活習慣を十分に修正したとしても、なお血圧が高い方には降圧剤の内服が必要となります。現在様々な種類の降圧剤があり、そのどれを内服するのがよいかは当然個々の人によって異なってきます。年齢や、糖尿病・心臓病・腎臓病・喘息等の他の合併している病気、時には妊娠等、その方その方の状態によりもっとも適切な降圧剤を選んで内服していただき、そしてもしある降圧剤を内服しても目標とする血圧まで改善しなければ、薬を増量したりあるいは他の降圧剤を組み合わせることにより血圧の改善を図ります。
また最近私たちが治療に用いる薬には重篤な副作用は少ないものの、時には最善と思われた薬でも患者さんの体質に合わず、何らかの副作用が出ることがまれにあります。そのため定期的な診察において血圧の改善状況とともに、有害な副作用が出ていないか自覚症状・診察所見・血液検査などのチェックを行い、それによって安全に血圧治療を行うことが可能となります。 ここまで読んでいただければ冒頭の「血圧の薬は飲みだしたら一生・・・」と言って、高血圧を放置するのは誤った考え方からくるものであると理解していただけたのではないでしょうか。さらに言いますと、血圧の薬を飲みながら生活習慣の修正を続けることによって、次第に薬の量を減らしていき最後には薬が不要になる方もおられます。残念ながらそこまで改善する方は比較的少ないのですが、それでもたくさんの薬によって治療するより、最小量の薬にて血圧のコントロールができるのに越したことはありませんので、降圧剤の内服とともに塩分など生活習慣修正も継続すべきと考えます。

 また少し専門的な話になりますが、すでに糖尿病や腎臓病・心臓病・脳卒中などを患っておられる方は、さらに厳密な降圧治療(上が130mmHg /下が80mmHg程度)を目標とすることが最新の学会の治療方針とされています。なお高血圧の患者さんの中には稀に、ホルモンの病気や血管そのものの病気等によって血圧が高い方がおられ、その場合、原因となる病気の治療が大事なのは言うまでもありません。(二次性高血圧症といい、そのような患者さんの場合、高血圧以外に何か症状を伴うことが多いと言われています。)

 さて最後になりましたが、自己紹介をさせていただきます。昨年から石野病院で毎週土曜日に内科外来を担当しております、嵯峨一行と申します。京都大学を卒業後、大学病院、市立病院にて内科全般についての診療に従事し、その後、大阪の病院では消化器内科を専門としてがんや肝臓病などの診断・治療に従事して参りました。現在は大学で医学研究をしつつ、地域医療の第一線で患者様の健康増進のため、努めて参りたいと考えております。なにかございましたらお気軽に外来にてご相談ください。


整形外科医 嵯峨 一行  

カメ吉観察日記

 わが家では、6年前からゼニ亀を飼っています。名前は、カメ吉。

 幼稚園児だった息子は、ポケットモンスターに出て来る"ゼニガメ"のかわいさに魅せられ、育てるつもりだった様ですが、今では見向きもしません。飼育は簡単で、カメ用のエサを一日二回与えるだけです。住居は、虫かご用プラスチックケース。夏場は臭うので水は細めに交換します。子供でも出来ることですが、反応もないので世話はしてくれません。

 2センチ大だったカメ吉も10センチ大に成長しました。飼育して発見したのですが、亀は意外と足が速い。成長するにつれ手足の筋肉もがっちり付いてくるので、鈍間ではありません。
 次の意外性ですが、鼻息が荒い。小さい鼻の穴ですが、2ミリ位の粒状のエサが顔にまとわり付き食べにくくなると勢いよく飛ばしています。こんな調子で最初はおもしろがって子供と観察をしていました。

 今ではすっかり爬虫類顔になり触りたくない気もしますが、命あるものは見捨てる事は出来ません。浦島太郎の気分で世話をする毎日です。

(まめ知識)ゼニガメの由来
 江戸時代の文銭のように、甲羅が丸く扁平だというのが理由。


看護師  K.M

理事長推薦ロック名盤 第3回

第3回 『アナザー・グリーン・ワールド』 イーノ

 何とか連載第3回までこぎつけました。
 評判が悪ければすぐにやめようと思ったのですが、私の駄文をちゃんと読んでくださっている方もおられるようで、お蔭様で連載を続けさせていただいております。

 先日も「先生はロックに詳しいようですが、イーノの作品でまず最初に聞くとしたらどれがいいでしょうか?」とご質問をいただきました。その時あげさせていただいたのが、今回ご紹介する『アナザー・グリーン・ワールド』です。
 イーノは80年代に「環境音楽」を確立したミュージシャンとして有名です。「環境音楽」といういのは広い意味では周りの環境に埋没する静かな音楽のことですが、イーノが提唱した「環境音楽=アンビエント・ミュージック」はもう少し積極的に「周りの環境を決定づける音楽」という意味を含んでいます。例えば、ウィンドウズ95の起動音はイーノが作曲したのですが、音そのものが「ウィンドウズが起動する」という状況のイメージを作り出していると言えます。

 ここまで書くと、「イーノというのは何やら小難しい現代音楽家か?」という印象を与えてしまいますが、もともとはドギツイお化粧をして、ロキシー・ミュージックというバンドに参加していた「ヴィジュアル系ロック・ミュージシャン」(当時そんな言葉はありませんでしたが)でした。
 さて、そんなヴィジュアル系だったイーノはロキシー・ミュージックを脱退してソロとなりましたが、生死をさまようほどの交通事故に遭ってしまいます。この事故が音楽的な転機ににもつながったようで、それ以後の作品は明らかに方向性が変化していきます。ちょうどその過渡期である75年に発表された3枚目のソロ・アルバムが『アナザー・グリーン・ワールド』です。それまでのロック系の曲と、以後の「環境音楽」につながっていく曲が違和感なくバランスよく配置され、多くの人にとって聞きやすくクオリティの高い作品となっています。
 イーノの代表作であるだけではなく、音楽史的にも重要な作品であると言えます。

医療法人一仁会 石野病院
理事長  岡田 純