2007年7月3日火曜日

理事長推薦ロック名盤 第3回

第3回 『アナザー・グリーン・ワールド』 イーノ

 何とか連載第3回までこぎつけました。
 評判が悪ければすぐにやめようと思ったのですが、私の駄文をちゃんと読んでくださっている方もおられるようで、お蔭様で連載を続けさせていただいております。

 先日も「先生はロックに詳しいようですが、イーノの作品でまず最初に聞くとしたらどれがいいでしょうか?」とご質問をいただきました。その時あげさせていただいたのが、今回ご紹介する『アナザー・グリーン・ワールド』です。
 イーノは80年代に「環境音楽」を確立したミュージシャンとして有名です。「環境音楽」といういのは広い意味では周りの環境に埋没する静かな音楽のことですが、イーノが提唱した「環境音楽=アンビエント・ミュージック」はもう少し積極的に「周りの環境を決定づける音楽」という意味を含んでいます。例えば、ウィンドウズ95の起動音はイーノが作曲したのですが、音そのものが「ウィンドウズが起動する」という状況のイメージを作り出していると言えます。

 ここまで書くと、「イーノというのは何やら小難しい現代音楽家か?」という印象を与えてしまいますが、もともとはドギツイお化粧をして、ロキシー・ミュージックというバンドに参加していた「ヴィジュアル系ロック・ミュージシャン」(当時そんな言葉はありませんでしたが)でした。
 さて、そんなヴィジュアル系だったイーノはロキシー・ミュージックを脱退してソロとなりましたが、生死をさまようほどの交通事故に遭ってしまいます。この事故が音楽的な転機ににもつながったようで、それ以後の作品は明らかに方向性が変化していきます。ちょうどその過渡期である75年に発表された3枚目のソロ・アルバムが『アナザー・グリーン・ワールド』です。それまでのロック系の曲と、以後の「環境音楽」につながっていく曲が違和感なくバランスよく配置され、多くの人にとって聞きやすくクオリティの高い作品となっています。
 イーノの代表作であるだけではなく、音楽史的にも重要な作品であると言えます。

医療法人一仁会 石野病院
理事長  岡田 純