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2012年7月12日木曜日

地域連携室だより

今回の地域連携室便りは、「高額療養費制度」について取り上げてみました。
例えば入院時に窓口支払い(自己負担)が高額になった場合、保険制度上、自己負担額が一定限度額を超えると、その超えた負担分については、最終的には支払わなくてもよいという仕組みになっています。「支払わなくてもよい」というのは、年齢や所得に応じて最終的に支払う医療費の自己負担限度額が決められているということです。(図1・2)越えた自己負担分は、加入する保険や公費負担制度から給付されることになります。これが「高額療養費制度」です。ただし、制度を利用する上では、いくつかの規定や条件があり、やや複雑です。そこで、実際の制度のあらましを見ながら、利用の仕方や留意点について説明します。




Ⅰ「高額療養費制度」の守備範囲
「高額療養費制度」の対象範囲となる自己負担分とは、原則療養費(直接の治療費)の一部負担金部分のみで、入院時食事療養の食事療養標準負担額(いわゆる食費代)や、差額ベット等の特別料金、オムツ代などの保険外負担は対象外となります。
Ⅱ「高額療養費制度」の算定申し合わせ
①一人を単位として計算。
②月の一日から月末までの一ヶ月を単位とし て計算。(月をまたいでの合算はできない)
③それぞれの病院・診療所ごとに計算。
④入院・外来は別で計算(同一医療機関でも)。
⑤保険者ごと(加入している保険証の種類別) に計算。


この二点が原則的な給付条件となりますので留意しておいて下さい。利用方法としては、治療前(入院前)にあらかじめ負担限度額が決まるように手続きをしておく「現物給付」と、治療後(入院後)全額支払った後に超過した負担分を返してもらう「償還払い」のどちらかになります。次に「自己負担限度額」ですが、それをまとめたのが(図2)です。制度上、①一般患者(70歳未満)②高齢受給者 (70歳~74歳)③後期高齢者(75歳以上及び65歳以上で寝たきりの方)に別れ、また所得によりその負担限度額が変ってきます。まず①の一般患者ですが、この世代の負担割合は原則三割となっているので、全医療費が大きくなれば自己負担も増えます。(もう一度図1を参照して下さい)、そこで現在では、どの保険者でも事前に手続きをすれば、「限度額適用認定証」という負担限度額証明が発行されますので、自己負担分の支払いは認定証に明示されている限度額までとなります。事例として(図3)を見ておいて下さい。むろん、精算後でも償還払いの申請手続きをすれば、自己負担限度額と支払い済みの自己負担金との差額を払い戻してもらえます。


一方、②と③(70歳以上の方)では、すでに、保険証の発行時から負担限度額が決まっているので、事前申請をせずとも窓口請求は最初から限度額までとなります。(よって精算後に償還払いの請求をすることもありません)ただし、所得によっては負担限度額が下がる可能性があるので、入院時には事前に保険者に確認するようお勧めします。限度額の区分変更があれば、「限度額適用・標準負担減額認定証」が発行されますので、病院窓口に提示することで、この場合は負担限度額が引き下げられた請求になります。

以上「高額療養費制度」のあらましを見てきましたが、今年四月からは、外来医療費分でも現物給付が始まっています。ご質問や相談がございましたら、お気軽に地域連携室・相談室にお申し出下さい。

次回は「高額療養費制度」のもう一つの仕組みである「世帯合算」・「多数該当」と、外来での現物給付について取り上げたいと思います。

2012年4月6日金曜日

地域連携室便り

先日、あるリハビリに関するフォーラムに参加してきました。
 
 その日のテーマは、難しい「高次脳機能障害」。脳卒中や頭部外傷の後遺症による脳の機能障害のことを言いますが、適切なリハビリを実施することで、一定度の障害の回復が期待できるということが、脳科学の進展によりクローズアップされてきています。フォーラムでは、その障害と向き合い、長いリハビリ期間を経て家庭にそして社会に復帰された方と、それを支えてきた家族や地域の支援者の方々の活動を紹介しながら、そうしたことを可能にしてきている、いわばリハビリの「最前線」を紹介していくものでした。

 当日のプログラムは、高次脳機能障害のリハビリを実際に続けておられる方の記録映像を見ていきながら、まずその障害とはどんな障害なのかを考えていくことから始まります。
高次脳機能障害は、一言で言い当てることはできませんが、おおよそ周囲から見て「別人のように思える」というような感じではないかと考えられます。具体例としては、身体的な機能は回復してきているのに、自分の年齢がわからない(記憶障害)、物事の流れ・手順がわからなくなる(遂行機能障害)、自分から何もしない(発動性低下)、急に怒り出す、病識が欠如しているなど行動や感情のコントロールができない、といった症状が現れます。また、自分の左半側の刺激に気づかない、反応しない(左半側空間無視)、早い話し・長い話しが理解しにくい、漢字より仮名が難しい、思ったことと違うことを言う、計算が困難になるなどの症状を伴う場合も多くあります。記録映像にもそのような場面がいくつも出てきて、日常生活で普通にできるであろう事が出来なくなり、まるで人が変わってしまったかのようになってしまう、この現実が本人の混乱はもちろんの事、家族や周囲の人もどう接していいかわからないなどの深刻な事態を引き起こすことになるのです。

 それではどうしたらよいのか。フォーラムでは、実際にどんなリハビリを実施して、家庭に社会に復帰してきたのか、当事者から話がされます。高次脳機能障害の特徴には、病棟生活ではわかりにくい、本人が障害を認識できない場合が多い、しばしば個人の性格と混同あるいは誤解する、半年~年単位で変化するなどが上げられています。この事から、その「リハビリ」も「障害があるからできない」のではなく、「障害があってもできた」という体験をより大切する「リハビリ」が必要であると話されます。今、自分がどんなふうになっているのか少しでも分かるようになる、いわばその人の主体性の確立を促すような「リハビリ」こそ重要と考えられているのです。更にその実践として、第一に、障害をめぐる状況をただ受け入れるのではなく、状況にあわせて、自身の生活(考え方)を変えていくようにすること、第二に、「あせらないで」「あきらめず」の年単位での取り組みを続けるようにする、第三に、本人の意欲を維持すること―そのために、本人の関心を引き出す記憶への働きかけ、役割のある暮らしをつくる―等が上げられます。こうした事は、例えば病院で行うリハビリというより、家庭や地域での日常生活自体が「リハビリ」と一体化しているような取り組みを、息長く続けていくということであると考えられます。そのために、本人を支援する家族・地域の専門機関の働きの重要性が指摘されました。
 
 当院は回復期のリハビリを担う病院ですが、当院にも程度の差こそあれ、高次脳機能障害を持つ患者さんが入院されていることで、そのリハビリを、退院支援も含めてどのように進めていくかが大きな課題となっています。フォーラムで感じたのは、回復期リハビリ病棟は最大で半年間のリハビリ期間がありますが、その期間内でこうしたリハビリが完了できるわけがなく、どのようにしてより安定した、在宅に戻っての生活リハビリが継続していける状態や環境を創り出していくのかを考えないといけないという事でした。そのためには、地域の在宅ケアシステムや福祉サービスにどのように「繋げていく」のか、効果的な「連携」をどう進めていくのか、今まさに我々が問われていることであると思います。

2011年10月6日木曜日

地域連携室だより

 八月の暑さの中、宮城県石巻市など震災後の地へ出向く機会を与えられた。津波の後の瓦礫などは、ほぼ撤去されていたものの、壊れた家々が所々に残っていて人の気配は少ない。街中一帯が、一種空虚でうつろな時間が流れて奇妙な感覚にとらわれたが、倒壊家屋の解体・片付け・整理などのお手伝いをした。
 
 そんな中、ある家の二階にピアノが残っていた。ご婦人がそのピアノを、とある町の学校に寄贈されるとのことで二階から降ろすお手伝いをした。移動が終わった後、そのご婦人が最後にそのピアノを弾いてほしいと言われた。作業に加わっていた若者と牧師が賛美歌を演奏し皆で賛美した。演奏後ご婦人は淡々と「ありがとうございました」と皆に挨拶をされた。ピアノは車に載せられ去って行く。おそらく津波で亡くなられた娘さんの愛用していた思い出のピアノ。ご婦人はどんな思いで最後のピアノの音色を聴き、何を思っていらしたのだろうか。
 
 このご婦人と私たちは、震災がなければ出会わなかったであろうし、このピアノの最後の音色を共に聴くなどということもなかったに違いない。復興の声が高らかに響く震災後の地では、こんな光景がいまだに日常の中に無数に存在している。この先このご婦人にはもう会うことも無いかもしれない。八月の震災の地は暑く、心に言い知れぬ傷を受け、悲しみを抱えたままでも前を向いて生きていこうとする人の心の営みが、むしょうに胸を熱くしてやまない。

2011年8月5日金曜日

地域連携室だより

 当院は、リハビリの提供を中心に行う病院です。現代医療の中でリハビリが担う役割と、それに対する期待は大きなものがあります。が、リハビリは万能でないことも、よく知らなければなりません。リハビリが、損なわれた身体機能等を元にもどして、総てを解決してくれるものではないからです。今や、「いのち」の神秘にこんなにも肉薄している時代はありませんが、その終わりを克服することは出来ず、「いのち」そのものは、神の領域であることに変わりはありません。私達が持っている「いのち」はこの世では永遠でなく、はじめがあり、終わりがあります。誰もがはじめを経験した以上、例外なくその終わりを体験せねばなりません。そう考えると人は意味ある終わりをどう迎えようかと、どこかで思っているのではないでしょうか。もし、そうであるならば、人はそこに辿り着く為に意味ある人生を模索していて、それは、とりも直さず人が今をどう生きてその存在を確認するかという事に他ならないのではないでしょうか。

 意味ある人生、そしてそこに何らかの障害が起きた時、人はそれを克服して、もう一度自分の「いのち」の意味を問い直し、その存在を確認しようとする。リハビリはそれを手助けする為に存在するのではと思うことがあります。リハビリも、そしてリハビリを提供する者も、その事をふまえてより謙虚に、人と、その限りあるけれどもその人にとって意味ある人生に向き合う存在でありたいと切に願うのですが。

2011年4月25日月曜日

地域連携室だより

 未曾有の大震災・津波・見えない放射能汚染の恐怖と連日私たちの周りでは、これまでに体験したことのない事実が進行しています。
被災された方々に、明日への希望が示されますように祈ることしか出来ない日々であります。

 そんな中でも私たちは、病院として日常の営みを続けなくてはなりません。
当院はリハビリテーションを医療活動の中心に据えている病院です。
多くは「リハビリをしてなんとか在宅に戻って生活を続けたい」と希望する患者さんを受け入れていますが、在宅に戻るには予想以上に多くの困難があることも事実です。

 当院の相談室は三月から専従相談員を二名体制にして、そんな患者さん・ご家族の方への支援をより充実したものにしていきたいと考えています。
患者さんやご家族と一緒になって、地道に一つ一つの課題を考え乗り越えていく、患者さんにとってよりよい生活はどのようなものか、それを形にしていく、そんな取り組みができればと願っております。

 病院の相談室は、月曜日から土曜日(時間は午前九時から午後五時、土曜日は十二時まで)オープンしています。
入院の方だけでなく外来や在宅の方のご相談も承っておりますので、医療や介護について困っていることや、聞きたい事がございましたらお気軽に訪ねていただければと思います。