2009年1月30日金曜日

理事長推薦ジャズ名盤 第1回

第1回『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 /V.S.O.P.クインテット

 第1回目のジャズ名盤としては別の作品を考えていたのですが、1月1日の朝刊にフレディ・ハバートの訃報が掲載されていたのを目にし、急遽変更いたしました。彼への追悼の意味を込めてこの作品をご紹介します。
 内容に触れる前に「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」についてご説明します。日本たばこ産業がメイン・スポンサーとなり、77年から92年にかけて行われた大規模な野外ジャズ・フェスティバルで、大阪では「万博公園お祭り広場」で毎年8月に開催されました。今となっては考えられないのですが、学生にも手が届くリーズナブルな料金(5,000円位だったと思います)で、マイルス・デイビスやチック・コリアやハービー・ハンコックといったスーパー・スターたちのライブを見ることが出来たのです。バブル景気のなせる業でした。私も80年代にはほぼ毎年通い続けたものでした。しかし、残念ながらバブルがはじけ、スポンサーが撤退し、フジ・ジャズ・フェスティバル等他の大規模な野外ジャズ・フェスティバル同様終了となってしまいました。2000年代に入り、各地で野外ロック・フェスティバルが盛り上がりを見せているので、何とか「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」も復活してほしいものです。
 さて、『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 は79年の第3回「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」田園コロシアムでのライブ録音です。『伝説』と仰々しい言葉がついていますが、これは決して誇張ではありません。この日東京は豪雨に見舞われのですが、V.S.O.P.クインテットが1曲目の「アイ・オブ・ザ・ハリケーン」を演奏している間だけ曲のタイトルどおり雨がやんだという嘘のような逸話が残っているのです。もちろん聞いていただければ解りますが、演奏自体も凄まじく、『伝説』と呼ぶに相応しいものです。
 メンバーはハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)、ウェイン・ショーター(サックス)、そして、トランペットのフレディ・ハバートです。つまり、60年代のマイルス黄金期のメンバーが再結集して、病気療養中であったマイルスの代わりにフレディ・ハバートが参加したユニットがV.S.O.P.クインテットということになります。
 2曲目以降は再び豪雨となり、演奏者も観客もずぶぬれになっていたとのことですが、逆にそれが観客との一体感を増していきます。ライナーノーツにもハンコックの言葉として紹介されていますが、「自然のインプロヴィゼーションが演奏者のインプロヴィゼーションを触発」していったようです。前回紹介した『浪漫の騎士』では計算され尽くした演奏技術の極限を聴くことが出来ますが、『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 では即興での演奏技術の極限を堪能することが出来ます。
 1997年にはトニー・ウィリアムスがこの世を去り、今回フレディ・ハバートも亡くなりました。しかし、彼らが残した『ライブ・アンダー・ザ・スカイ伝説』 は永遠に語り継がれることでしょう。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
理事長 岡田 純