2009年1月30日金曜日

心療内科開設

◎ どういう時に心療内科にかかればいいの?

 「何となく身体がだるい、胸がドキドキする、息苦しい、頭が痛い、身体がふわふわする、食欲がない、お腹が痛い、体重が減った、眠れない」などといった症状で病院を受診したけれど、検査をしてもどこも異常がありませんと云われた方はおられませんか?

 人間の身体の臓器と脳の間には自律神経という神経があって、この働きが乱れることによって身体の臓器や器官がうまく作動しない場合にこのような症状が出てくることがあります。一般的な検査でわかるのは器質的な異常のみで、こうした各臓器の機能的な異常は見逃されることが多いんです。また人間の身体は下垂体、甲状腺、副腎、卵巣など様々な臓器から出るホルモンによっていろいろな機能が調節されていて、こうしたホルモンのバランスに異常がある場合も同様の症状が出てくることが知られています。これも健診などの一般的な検査ではホルモンレベルまで測定しないため、異常が見つかりにくいことが知られています。

 今日のストレス社会の中で、さまざまな理由から不安になったり、イライラしたり、気持ちが沈んだりすることによって、脳の慢性的な疲労をきたす場合も自律神経の働きを介して同様の症状が出てくることが知られています。このような症状に対して、心療内科では心と身体の両面からアプローチしていきます。人間の身体を心と身体に分けて治療するのではなく、「心身一如」の考え方のもと、治療を進めていくことが心療内科の特徴といえます。

 このような症状や病気でお悩みの方、一度心療内科を受診してみてください。

◎ 心身症ってどんな病気?

 心身症って聞いたことがありますか?今日のストレス社会の中ではこの心身症が急激に増加してきていることが知られています。でもこの心身症、実は病気の名前ではないんです。どういうことかというと、身体の病気の中で、その病気の発症や経過に心理的なストレスや生活環境などの社会的要因が密接に関わっている病態のことを「心身症」と呼んでいるのです。身体の病気の中には実際に目に見えてその器官が形態的に障害されている場合と、形態的に異常がなくてもその器官の働きが損なわれている場合とがあるのですが、そのいずれにおいても心身症の病態を示すことが知られています。

 自律神経系の働きが乱れることによって器官の働きに異常をきたしている病気を「自律神経失調症」と呼んでいますが、この自律神経系の働きの乱れは心理的ストレスと密接に関わっていることが多く、自律神経失調症は心身症の代表格といえます。
その他、呼吸器系疾患としては気管支喘息・過換気症候群など、循環器系としては高血圧・狭心症・心筋梗塞など、消化器系としては胃潰瘍・過敏性腸症候群・上部消化管機能異常など、神経・筋肉系としては緊張型頭痛・片頭痛・めまい症、線維筋痛症など、内分泌系としては糖尿病・甲状腺機能亢進症など、さまざまな身体の病気が心身症としての病態を持っていることがわかってきました。最近注目されているメタボリック・シンドロームも心身症としての治療を要する病気の1つといえるでしょう。

 こうした心身症の治療には心と身体の両面からアプローチが不可欠と考えられています。心療内科は「心身症を治療する専門診療科」としての役割も担っているのです。


医療法人一仁会 
脳神経リハビリ北大路病院
副院長 椋田稔朗
(心療内科専門医、糖尿病・甲状腺専門医)