2009年3月31日火曜日

真に豊かな社会のための技術とは

 技術の継承には、ただ単に量的な後継者の確保だけでなく、最先端且つ高レベルの技術といった質的な課題がある。伝統産業においては、無形文化財のような極めて高度な技術や、過去に失われてしまった技術を復活させる試みもある。これは技術者個々の資質に大きく依存するもので、個別に対策を考える必要がある。個人の誇りや意欲を拠り所として、多くの若者に高度な技術を持った職人になろうという動機付けをするには、世界に誇る日本の技術レベルの価値をアピールすることが重要である。また、高度な技術を発揮する機会なくして、その技術は継承されないので、幅広い日常的な商品の普及と同時に、高級品市場への対応と営業を強めることが求められている。
 技術・技法は固有なものであっても、その価値・個性・限界は、他の技術・技法・素材などに出合ってこそ明確になるので、高度な技術を追求していく上で、他の業種・技術・技法・素材などの職人や生産者との間における研鑚・交流を積極的に進めていくことが必要である。その中で、何が私たちの社会を豊かにするのかという共通項を探り、個々人の利益を越えた共通の利益を共有できる仲間を増やして行かなくてはならない。
 人員確保の問題、教育の問題、技術継承の問題、経済的自立の問題、そのすべてにおいて、正に、医療・福祉分野が直面している共通課題だと言えよう。


訪問看護師 T・T