2009年3月31日火曜日

ひどい頭痛「偏頭痛」

 片頭痛という言葉を聞いたことがある方は、たくさんおられると思います。片頭痛は心臓の拍動にあわせてズキンズキンと痛みます。激しい痛みとともに、嘔気・嘔吐、下痢などの症状を引き起こしたりして、仕事や学業、日常生活に支障を来たすやっかいな頭痛です。私自身も片頭痛を患っていますが、2000年に新しい薬(トリプタン製剤)が開発されて、治療しやすくなってきました。

1、 どんな病気か?
 片頭痛に悩まされている人は非常に多く、日本人の15才以上の8%以上、800万人~900万人が片頭痛に悩んでいると言われています。約80%が女性です。30才代の女性では5人に1人が片頭痛と言われています。
 片頭痛が起こる頻度は1ヶ月に1~2回のことが多いですが、多い人では週に2回以上起こる人もいます。
 一度片頭痛発作が起こると、短くて数時間、長いと3日間くらい、ズキンズキンと心臓の拍動に合わせるような頭痛が続きます。頭の片側のことが多いですが、両側に起こる場合もあります。
 痛みは動けない程強いこともあり、頭の位置を変えるだけでも痛みが悪化します。光や音に敏感になり、騒々しいところや明るいところにいられなくなります。嘔気・嘔吐や下痢を伴うこともあります。

2、 なぜ起こる?
 片頭痛のメカニズムはまだよくわかっていませんが、最近になって頭や顔面の知覚をつかさどる三叉神経が関係しているとわかってきました。
 脳の血管は常に収縮・拡張して、脳の血流が一定になるように調整しています。この血管の収縮・拡張に関与しているのが血液中の血小板から放出される「セロトニン」という神経伝達物質です。セロトニンはストレスを感じたときや、女性では月経周期に伴い女性ホルモンの量が変化したときなどに血管内に大量放出されることがあります。
 セロトニンの大量放出が続くと脳の血管は収縮するのですが、セロトニンが出尽くしてしまうと、脳の血管が急激に拡張します。急激な血管拡張は血管壁や血管周囲の三叉神経を刺激して炎症を引き起こし、痛みすなわち片頭痛が起こります。

3、 片頭痛の前ぶれ
 片頭痛が起こる直前に、目の前がチカチカする、ギザギザしたものが見える、あるいは視野の一部が欠けるなどの症状が出ることがあります。これらは片頭痛の前ぶれ症状で、セロトニンの大量放出で脳の血管が収縮しているときに起こります。

4、 診断
 診断は問診が中心になります。診察室では次の点を詳しく伝えましょう。
①痛みの特徴:痛み方、痛みの起こ る場所、痛みが続く時間など
②発症年齢
③頭痛以外の症状:光や音、におい に敏感になったり、下痢を伴った りします
④きっかけの有無:アルコール、チョ コレート、入浴など

5、治療
 片頭痛の治療で使われるのは主に次の2種類です。

①消炎鎮痛剤
 市販のセデス、バファリン、ナロンエースなども含めて、以前から使われてきた薬です。
 血管壁やその周囲の炎症を鎮めて痛みをおさえます。おもに症状が軽い人や発作の頻度が少ない人に使います。但し、頭痛が起こる直前の前兆が現れたときから、頭痛が起こってすぐに服用しないと効果はあまりありません。

②トリプタン製剤
 2000年に承認された薬で、現在は医師の処方箋が必要です。
 主に拡張してしまった脳の血管を収縮させて正常な太さに戻すとともに、三叉神経から痛みの原因物質が放出されるのをおさえます。おもに症状が重く仕事や日常生活に支障がある人に使います。
 この薬は消炎鎮痛剤に比べて服用のタイミングが遅れて、頭痛が強くなってからでも効くという長所があります。
 病院では、主にこのトリプタン製剤を使って治療しています。私もこの薬のおかげで休まずに仕事をできています。

6、薬の副作用
 消炎鎮痛剤では嘔気や胃腸障害が出ることがあります。また長期にわたって大量に使い続けると、逆に薬によって「薬剤誘発性頭痛」がおこる場合もあります。薬はなるべく飲みたくないといって服用のタイミングが遅れると余計に効果が薄れるので、大量に服用してしまうという悪循環に陥りがちです。
 トリプタン製剤は痛みが強くなってからでも効果があるので薬を飲みすぎることはあまりありませんが、血管を収縮させるので、治療されていない高血圧の方などには使えません。


7、注意しなければいけない頭痛
 ごく軽いくも膜下出血の頭痛は、片頭痛と区別がつきにくいことがあります。片頭痛の方でいつもと違う頭痛が起きたときは要注意です。また片頭痛は30才位までに始まることが多いので、30才を過ぎて初めて強い頭痛が起きた方も一度CT・MRIなどで検査されることをお勧めします。


8、日常生活
 片頭痛はストレスから解放されてほっとしたときによく起こります。片頭痛を予防するには、普段からストレスをためないようにすることが重要です。
 但し、現代人は私を含めてストレスなしで生活することは不可能です。悩んでいる方は「頭痛くらいで病院に行くなんて」と思わず、ぜひ「脳神経リハビリ北大路病院の頭痛外来」を予約してください。片頭痛を持っている医師の方が話はよくわかると思っています。


医療法人一仁会
脳神経リハビリ北大路病院
院長 岡田達也(偏頭痛患者)