2008年4月7日月曜日

変形性膝関節症とは


 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)は、膝関節の軟骨が劣化や摩耗により消失し、痛みがでたり、無症状になったりを繰り返しながら、5年から10年以上の経過で徐々に進行する病気で、男性より女性に多くみられます。
 関節軟骨は外的衝撃を和らげ、関節の動きを滑らかにする働きをしています。また、ヒアルロン酸を含む関節液が潤滑油と軟骨の栄養補給の役割を果たしています。
  変形性膝関節症が高度になり、O脚になると病気の進み方も急に早くなります。65歳以上の高齢者ではたとえ症状がなくてもX線では70%に変形性変化がみられ、患者数は国内で1000万人以上、要治療者は700万人と言われています。

 (症状)
 
 主な症状は膝の痛みと水がたまることです。症状が進むと、膝の動きは制限され、膝が完全に伸びなくなります。
 初期には、立ち上がり、歩きはじめにひざが痛み出し、中期には歩くと膝が痛み、正座、階段の昇降が困難になってきます。末期になると、変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行も困難になります。

(原因・病態)

 原因は関節軟骨の劣化、外傷、肥満、素因(遺伝子)などが考えられます。明らかな原因のない一次性関節症と怪我・炎症等の後に生じる二次性関節症に分けられます。
 90%以上は一次性関節症です。加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使いすぎにより擦り減り、関節が変形します。

(診断)

 問診や診察、特に触診で膝内側の圧痛、動きの制限、腫れ、変形などを調べ、レントゲンを撮影して診断します。必要によりMRIなどの検査も行います。

(予防・治療)

 日常生活の注意点(予防)としては以下の6点が挙げられます。

 ①太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を強化する。
 ②肥満であれば減量する。
 ③正座をさける。
 ④膝を冷やさない。クーラーなどに注意する。
 ⑤洋式トイレを使用する。
 ⑥急に痛むときは冷やしますが、慢性化したら温めて血行を良くする。

 治療としては、大きく分けて以下の3点があげられます。

 ①薬物療法:外用薬(湿布薬や軟膏)、内服薬(消炎鎮痛剤)、関節内注射(ヒアルロン酸など)
 ②理学療法:大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練、装具療法、温熱療法など
 ③手術 :関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術など
 

 「関節内注射に使うヒアルロン酸とは?」

・ヒアルロン酸は、もともと体内(目や皮膚、関節など)に含まれている成分です。ヒアルロン酸は、そのすぐれた保水力で注目を集めており、身近なものでは、化粧品や健康食品などに使用されています。また医薬品の原料としても使用されています。

・赤ちゃんの肌がみずみずしく、ハリがあるのはヒアルロン酸を多く含んでいるからです。保水力に優れるヒアルロン酸は、皮膚に潤いを保つ化粧水やスキンクリームなどに使用されています。

・膝や肩の痛みに使う関節内注射薬や目薬などに、純度の高いヒアルロン酸が使用されています。医薬品では保水力のみならず、ヒアルロン酸の持つさまざまな特性が活かされています。

 高分子ヒアルロン酸注射の効果としては、以下の4点があげられます

 ①関節の痛みを抑える
 ②炎症を抑える
 ③関節の動きを良くする
 ④軟骨の摩耗を抑える
 
 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)は、ありふれた病気であり、歳だからとあきらめたり、我慢している場合が多いのが特徴です。
 早期に発見し、適切な治療を開始することで、病気の進行を遅らせ、ADL(日常生活動作)を維持することが可能です。膝に痛みを感じたときは早めに病院を受診しましょう。


整形外科医 赤木祥範