2005年10月27日木曜日

プライマリ・ケア

 最近「プライマリ・ケア」という言葉がよく聞かれるようになりました。今年の5月に日本プライマリ・ケア学会学術集会が京都国際会館で開催され、私が会頭を務めましたが、この会も第28回を数え、わが国でもプライマリ・ケアという言葉や概念が定着してきたように思われます。
 米国医学会の定義を借りますと、「プライマリ・ケアとは包括的な、地域の第一線で提供されるヘルスケア・サービスである。そのヘルスケア・サービスは、継続的で、地域や家族を視野に入れたものでなければならない」とされています。すなわち、患者さんの現時点の病悩だけではなく、過去から将来へ続く長い期間にわたり、本人はもとより、家族や周囲の関係者や生活環境までも視野に入れた医療サービスを意味しております。

 わが国では、個々の臓器や特定の疾患を対象とする医療は世界のトップレベルにあります。それに比べて患者さんをひとりの人間として総合的に診療することが、疎んじられているようです。この点を反省して、ここ数年の医療教育では、プライマリ・ケアの修練を重視したカリキュラムが組まれるようになりました。

 石野病院では、脳神経、腹部・消化器、呼吸器、リハビリなどの各領域の専門医がそれぞれの領域の診療に当たると共に、一人の患者さんについての医療情報を蜜に交換し合って、プライマリ・ケアに沿った診療を実践しています。石野病院のような小規模の病院では、常勤の医師が継続的に診療しているので、患者さんとスタッフとの人間関係も、スタッフ相互間の連携も密でありますから、専門的医療と共にプライマリ・ケア的な機能も兼ね備えていると自負しております。

医療法人一仁会会長
石野病院顧問 岡田 慶夫
2005年 秋号