2013年4月1日月曜日

慢性胃炎の患者さんに対するピロリ菌除菌療法が保険適応となりました


ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリといいますが、ここでは簡単にピロリ菌とします。胃の内部はとても強い酸性になっているので、昔は無菌状態と考えられていました。ところが1983年にピロリ菌が発見され、その後いろいろな病気の原因になっていることがわかってきました。胃炎や胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらに恐ろしいことに、胃の悪性リンパ腫や胃癌といった悪性疾患との因果関係も証明されています。ピロリ菌を持っている人は持っていない人より、胃癌の発生率が6~22倍高いというデータもあります。

 感染経路についてははっきりと解っていませんが、経口感染と考えられています。感染率は発展途上国では7~8割、日本では5割(なんと50歳以上では8割)ぐらいといわれており、衛生状態と関係があると言われています。

 古くから胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍の患者さんで、ピロリ菌がいた場合除菌をした方が治りも早く、再発の防止にもなると解っていたので、胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍の患者さんに対する除菌治療は2000年に保険適応となりました。さらに2010年にはMALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者さんに対しても保険適応が拡大されました。
 
 ピロリ菌の除菌方法は簡単で、3種類の薬を1週間飲んでもらうだけです。治療中の副作用としては、下痢、アレルギー、肝機能障害、味覚異常などがあります。また、除菌後の副作用として逆流性食道炎や十二指腸びらんが起こることもあります。

 除菌治療をした場合、その約3カ月後に除菌できたかどうか判定をします。除菌の成功率は7~8割といわれています。除菌に成功すれば、現在の日本の衛生状態では再発の心配はほとんどないと言われています。除菌に失敗した場合は、もう一度保険治療で薬の組み合わせを変えて再除菌することができます。この場合も除菌の成功率は7~8割といわれています。

  一方、かなり以前から、慢性胃炎も原因のほとんどがピロリ菌の感染であると考えられてきました。しかし、慢性胃炎に対してのピロリ菌除菌は保険適応になっていませんでした。ピロリ菌を除菌して、慢性胃炎が改善するというデータが少なかったためです。しかし、ピロリ菌を除菌して、慢性胃炎が改善することが証明されたため、ようやく、2013年2月にピロリ菌に起因した慢性胃炎の患者さんに対してもピロリ菌除菌療法が保険適応となったのです。ピロリ菌陽性の慢性胃炎の方は、ピロリ菌陰性の方に比べて胃癌のリスクが高くなると考えられていますので、この保険適応は胃癌発生率の低下にもつながると期待されています。

 胃の調子の悪い方は是非内視鏡検査(胃カメラ)検査を受けていただき、ピロリ菌陽性の慢性胃炎であると診断された場合は、除菌治療を受けていただくようお勧めいたします。

理事長 消化器内視鏡専門医  岡田 純